こんにちは。よろずやOTです。
今回は車いすでの食事動作姿勢の評価について書いていきたいと思います。
車椅子で食事を食べるということ
皆さん、車椅子での食事場面は見てますか?一人で食べられていればそれでいいと思っていませんか?
病院で働いていると、どうしても車椅子で食事を食べている患者さんに遭遇します。本来は椅子で食べるのが望ましいですし、積極的に椅子を使用しているところも多いと思います。しかし、座位保持能力や時間の都合などから車椅子のまま食事を食べている方が多いのも事実だと思います。このような方は、一人で食べてはいるものの、食べこぼしが多かったり、すぐに疲れてしまったり、結構問題点が多いです。
原則上肢を使用する際は、安定した土台があり、正確な感覚入力があった上で行われるのが望ましいです。例えば、あなたが食事をする際、『玉乗りをしながら』食事をするとしたらどうでしょうか。そんな状況ではとても食べられないし、食べられたとしても、疲れて美味しくないかもしれないですよね。不安定な姿勢で食事をするということはそんな状況だということです。
そもそも一般の車椅子って基本的に移動を目的として作られていて,食事をしたり、長時間座るために作られていないんですね.なのでどうしても食事をしているとやりづらさが生じてしまいます。
今回は、そんな車椅子での食事の際に、見るべき2つのポイントと、基本的な姿勢改善方法4つをご紹介します。
良い姿勢、良いシーティング
まずはそもそも良い姿勢とはどのような姿勢でしょうか?
まず、こちらの座位姿勢をご覧ください。
基本は上半身は、耳の穴と,肩の骨が一直線になり,下半身は,股関節90°膝関節90°足関節90°となる姿勢が良いとされています.
実物だとこんな感じですかね。僕のもともとの姿勢が悪いのできっちり90°の姿勢にはなっていませんが…(^^;
悪い姿勢 ~仙骨座り、ずっこけ座り~
続いてありがちな悪い姿勢をご覧ください。
こんな感じで食事を食べている人をよく見かけませんか。いわゆる仙骨座りやずっこけ座りと呼ばれる姿勢です。
また、別の写真ですが前から見たときに左右に傾いている方も多いです。
いい姿勢と悪い姿勢の違いは?評価のポイント!
上写真の仙骨座りについて問題点を考えてみます。
・まず、骨盤が後傾し体幹も後方へ倒れている為、机の上が見えづらい状態となります。そこから机と上肢の距離も遠くなるため肩の筋疲労は高まります。
・臀部は前方へ滑ろうとしており、座面との間に剪断力(せんだんりょく 逆方向に働く力)がかかった状態で痛みが生じやすいです。
・足部がフットレストに乗っている状態なので、大腿は座面から浮き上がり臀部への圧が高まった状態です。
・さらに足が乗っていることで一層骨盤の後傾を助長し負の連鎖となっています。
・さらに、前から見た姿勢では、右側に傾きそちら側の臀部により圧力がかかっているということです。
こんな感じで問題点を評価できました。しかし、なかなか短時間でこれらを一度に見るのは大変ですよね。そこで今回これらを総合して見るべきポイントを2つに絞りました。それは、
『骨盤の傾き』そして、『力はどこにかかっているか』です。
赤文字のところは骨盤の傾きと、力について書いてある部分です。とりあえず基本はここから見ていけばわかりやすく問題点を把把握できるかと思います。
食事姿勢への超基本的な介入方法4つ
さて、ではそのような問題点のある姿勢を改善するためにはどうすればいいのか。超基本的な4つの方法をお伝えします。(上記の仙骨座りに限らず、基本的な部分になりますのでどなたにも応用できるかと思います。)
考え方としては、やはり①骨盤が真っ直ぐにして90度の姿勢に近づけてあげること。②圧を分散して痛みが出にくい姿勢にしてあげること。の2点が重要となります。
車椅子のサイズを合わせる
まずはここから見ていきましょう。
・座面のたわみを減らす事で横への傾きを軽減し圧の一点集中を防ぎます。
・またふとももの長さを座面の長さと合わせることで、圧をしっかり分散できます。座面が長すぎると、しっかり後ろまで腰掛けられない為、仙骨座りを助長しますし、短すぎると支持面が少なくなり圧を分散できません。
・足がしっかり床につく高さに設定することで、圧の分散と、足に体重を乗せやすくなり前方への重心移動が容易になります。結果、骨盤が起きることで背中が丸まるのを防ぎます。
足を下ろす
次に着目すべきは足の位置です。
足を下ろし大腿をしっかり座面につけて安定させることと、骨盤を前傾位にしやすい状態にする事が大切です。また、ちょっとした時に足で踏ん張れるので、主体的に体を起こす動作に繋がります。
注意点として、足が床につかない場合は足を下ろすと余計不安定なので、フットレストに乗せるか足台を使用しましょう.
クッションを入れる
基本的に車椅子の座面は布一枚です。なのでクッションや、座布団でも結構ですので入れて上げるだけで、臀部への圧が減少し、正しい姿勢を保つのことができます。
また、車椅子のサイズを合わせるといった時に、なかなか空きがなかったり、うまく調整出来ないことも多いです。(というかうちの病院は新患が来たときには1、2台しか選択肢がないです…)
そんな時に座面や背もたれにクッションを入れることで、なるべく体にあった車椅子に近づけてあげることができます。足の長さが長ければクッションで座面を上げて調整したり、臀部に対して座面が広ければお尻を包み込むようにクッションをいれて圧の分散を行います。
深く座る
座るときにしっかり深く座るよう声掛けをしたり、自力で行えない人には介助で後方へ引っ張り上げることで深く座るようにします。深く座ることで骨盤が立った状態で背もたれに寄りかかるため、正しい姿勢を保つことができます。
まとめ
車椅子での食事姿勢の評価方法についてお話しました。
あまりにも基本的な内容で「こんなこと知ってるよ」と思われた方もいらっしゃると思います。ただ、僕が知るかぎりまだこのような不良姿勢で食べている方も多い為、少しでもどこかの誰かがの姿勢が良くなればと思い書かせていただきました。
今回のまとめとしては、基本的には、骨盤の角度と、圧がどこにかかっているかを確認することで、食べにくさ、痛みについて見えてくるということです。
具体的な姿勢、環境の調整としては、次の4点をあげました。
①適切なサイズの車椅子を使う
②足をしっかり床に着ける
③クッションを入れる
④深く腰掛ける
また、今回お話させいただいたのは、あくまでも一般論で、自立はしてるけどイマイチうまく食べられないって人を対象として書いています。臨床では個別のシーティングが重要になります。また食事姿勢への対応方法としても、道具の選定や机の高さ、クッションを利用したシーティングなど様々な環境調整がありますので、対象者の状態に応じて評価する必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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